ファミリーガバナンスを活用した事業承継 その重要性とは?
近年注目されている“ファミリーガバナンス”。
資産運用や不動産、信託など関連する事項まで含め、一族の意思決定や管理体制を整える考え方です。
本記事では、特に事業承継におけるファミリーガバナンスの活用について、「法」的な税務対策と、家族の「情」という感情面の両面から解説します。
<目次>
ファミリーガバナンスの重要性と事業承継との関係
日本において、企業の約九割はファミリー企業であり、
経済産業省の報告書等でもファミリーガバナンス構築の必要性が指摘されています。
まだ耳なじみの無い言葉ではありますが、会社の持続的な成長と世代を超えた事業の永続を目指す上で、是非取り入れたい仕組みです。
ファミリーガバナンスの概要と定義
ファミリーガバナンスとは、ファミリービジネスにおける一族の紛争や揉め事を防ぎ、会社と資産を次の世代へ円滑に引き継ぐための統治の方法です。
具体的には、一族の価値観や行動規範を明確な指針として整備し、家族間での意思共有を図る会議の場を設けます。
これにより、将来的に親族や株主間で問題が発生するリスクを未然に防ぎ、企業の持続的な発展と企業価値の向上を目指します。
事業承継におけるファミリーガバナンスの役割
事業承継は、単に”代表の交代”や”自社株の移転”といった手続きだけで完結するものではありません。
ファミリーガバナンスは、「家族」「所有」「経営」3つの視点の境界線を明確に分け、ステークホルダーとも良好なコミュニケーションを保ちながら、スムーズな事業承継と事業の長期的な発展をサポートします。

事業承継に大事な「法」税金の話
自社株の評価引き下げと、納税資金の準備
税務における事業承継対策として避けて通れないのが、自社株の評価引き下げと、将来の相続における納税資金の準備です。
経営者は、計画的に自社株の価値をコントロールし、適切なタイミングで後継者へ移転させる必要があります。
この業務を円滑に行うためには、家族全員がその具体的な目的と必要性を理解し、協力する体制を事前に作っておくことが極めて有効です。
事業承継税制に必要な、家族内の合意形成
贈与税や相続税の負担を大幅に抑えられる「事業承継税制」の活用は、強力な選択肢です。
しかし、この特例を受けるためには、承継後も長期間にわたって従業員の雇用の維持や経営の継続といった条件をクリアし続けなければなりません。
そのため、税制の手続きを行う前提として、法人としての将来像や方針を家族内で共有し、認識を合わせておく必要があります。
<事例①>相続対策に関するトラブルと解決
以下でご紹介するのは、事業継承の際に起きた”トラブルの内容”と、”ファミリーガバナンスを用いたその解決例”です。
トラブルの内容
先代社長は「後継者の長男にすべての自社株を集中させる」という相続対策を内密に進めていました。しかし、これを知った経営に関与していない親族から「不公平だ」と大反対を受けてしまいました。
ファミリーガバナンスを用いた解決例
ファミリーガバナンスの仕組みを導入し、定期的なファミリーミーティング(家族会議)を開催。
その中で、非就業親族が会社の実態や非上場企業の経営に関する知識に乏しい為、メンバー全員を対象とした理論学習を実施しました。
そこで会社全体の現状と、自社株を集中させなければ経営権が分散してしまうリスク(法的な視点)や、借入の際の個人保証など、経営者が抱えるリスクを全員が理解し、株式を後継者に集中させる必要性について合意が得られました。
非後継者には個人資産や現預金など別の財産を多く配分する方針を明文化して決定し、必要な法的手続きも行ったため、円滑に自社株の移転を完了できました。
事業承継に大事な「情」家族の話
公式な場での話し合いで感情の先回りを防ぐ
家族の感情のコントロールは、事業承継において最も難しく、かつ失敗の原因になりやすい課題です。
「家族だから大丈夫」という甘えが修復不可能な対立を生むケースは後を絶ちません。
感情のもつれを予防するためには、公式な意思決定の場として「ファミリーミーティング(家族会議)」を行うことが推奨されます。
「ファミリー憲章」で引く、公私の境界線
また、家族のルールを明文化することも円滑な事業承継には欠かせません。
会社の意思決定にプライベートな感情を持ち込むことは、組織にとって大きな害になることがあります。
そうならないためには「ファミリー憲章」を策定することが有効です。
これにより公私の境界線が明確に示され、事業承継においては、後継者が適切な裁量を持って経営を行うことが可能になります。
<事例②>社長交代後のトラブルと解決
トラブルの内容
創業社長から会社を継いだ後継者ですが、引退したはずの先代が毎日会社に来ては現場のやり方に口を出します。
さらには先代の妻(後継者の母)までも社内の人事や経営方針に介入し、組織は混乱。親子関係も険悪になってしまいました。
ファミリーガバナンスを用いた解決例
まずは、外部の専門家によるサービスを利用して 「ファミリー憲章」を作成しました。
交代後の創業者の役割や出社頻度、それ以外のファミリーメンバーは経営に介入しない代わりに、定期的なファミリーミーティングで経営の報告を行うというルールを明文化。
家族全員に説明し、納得した上で署名を行いました。公私の境界線がルールとして明確になったことで、親子の良好な関係を取り戻し、新社長のもとで社内体制を一新して事業の発展を実現できました。
まとめ
- 「法(税制)」と「情(感情)」の両面からアプローチすることが事業承継成功のカギ
- 法へのアプローチ
:税制への対策と家族内の合意形成をセットで進める - 情へのアプローチ
:家族会議とファミリー憲章により、公私の境界線をルールとして明確化する
円滑なバトンタッチと将来のトラブル防止に向けて、まずは経験豊富な専門家へご相談いただくことが一番の近道です。
弊社(石塚 株式会社)のご支援について
弊社は以下の2つの支援策に加え、実績豊富な承継専門の税理士・弁護士のご紹介も行っております。ぜひお気軽にお問い合わせください。
- 事業承継学: 全6回(前半4回は会社を問わない理論学習、後半2回は各社様の状況を踏まえた優先論点の整理)を個別指導で行います。ファミリーガバナンス形成に関する理論と実務の急所を余すことなくお伝えします。託す人と継ぐ人の双方が決意を固め、経営のバトンを繋ぐための能力を養います。
- 伴走型コンサルティング: 毎月の面談を通じて、理念の策定から、意思決定の仕組み、承継やファミリー関与のルール設計、対外発信、実行まで、実際に経験した人間だからこそできる経営現場に即した具体的な支援を行います。その他にも事業承継以外の経営課題や後継者育成のご相談にも対応いたします。
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