親族内承継の全体像 5つのステップと注意点とは?
会社の一大事業である事業承継ですが、ビックイベントであるが故に現実感を持って考えるのは難しいものです。
しかし、親族内承継をスムーズに進め、自社の価値を維持・強化していくためには、適切な手順と事前の準備が欠かせません。
本記事では、親族内承継の基本概要から、計画的に準備を進める具体的なプロセスや注意点、さらには株式・税金面のポイントを解説します。
<目次>
親族内承継の基本:現状とメリット・デメリット
事業承継には、大きく分けると以下の3つの手法があります。
- 「親族内承継」
- 「役員・従業員承継(社内承継)」
- 「第三者への事業譲渡(M&A)」
親族内継承は、会社の経営権や自社株式・事業用資産を、現経営者の子ども・孫・親族へ引き継ぐ事業承継の手法であり、日本の中小企業において長年にわたって最も一般的で王道とされている継承スタイルです。
親族内承継の現状
【近年事業承継をした経営者の就任経緯】
| 親族内承継 | 従業員承継 | 社外への引継ぎ(M&A等) |
| 34.0% | 33.9% | 増加傾向 |
承継における選択は時代とともに多様化しています。
上記の情報によると、かつて主流だった親族内承継の実施は全体の約3割強にとどまり、従業員承継(社内昇格など)と同等の割合です。
このような時代においての 親族内承継は、昔のような”当たり前に息子に名義を変える”という行為ではなく”あえて選ぶ承継の形”であり、独自の特徴を活かして”企業価値を高める承継である”と意識をアップデートしていく必要があります。
親族内承継のメリット
-
関係者からの高い納得感
従業員・取引先・金融機関等からの反発が起きづらく、
経営の安定化や生産性の向上が図りやすくなる
-
早期からの計画的な教育
子どもや孫を、将来の後継者候補として長期的視点で育成できる
-
資産・株式移転の円滑化
生前贈与や相続などの法的・税務的枠組みを活用し、
税負担や自社株価の算定を抑える対策が採れる
親族内承継を企業価値を高める選択肢として捉えるとき、
最大の強みとなるのが創業の精神を引き継ぎ、社内外からの信頼を維持・発展させられる点です。
親族内承継のデメリット
-
後継者の適性・意欲
事前の選定や意思の確認が不十分な場合、
経営能力や意欲が不足した状態で相続する可能性がある
-
親族間でのトラブル
財産分配の際に法的紛争が生じないよう注意が重要。
具体的な事例などを参考に、トラブル回避の準備が重要になる。
-
公私混同の危険
公私混同が起きると、組織ガバナンスの低下や社内外からの不審につながる
準備不足で進めてしまうと、自社の信用や業績を大きく損なう危険性があります。
経営者の資質の有無や、親族間での感情的なトラブルというリスクをあらかじめ排除しておくことは不可欠です。
親族内承継の具体的な進め方と流れ
メリットを最大減に活かし、デメリットを最小限に抑えた親族内承継を進めるためには、
十分な準備期間(一般的に5年〜10年)を確保し、
「経営(経営者・業務)」「所有(株式・資産)」「家族」という3つの領域の課題を解決していく必要があります。
ここからは、承継を円滑に進めるための方法として5つのステップを具体的に解説します。

ステップ1:現状の見える化
まずは事業承継の出発点として、現在の状況を把握して書き出します。
<整理する項目>
事業・経営課題について:
自社の強み・弱み、財務状況、業界の市場環境や国内・海外の動向・変化
資産・権利構造について:
自社株の評価額、事業用資産(土地・建物など)の所有名義、経営者個人の連帯保証や個人融資の状況
ステップ2:ゴールの設定と課題の発見
「経営・所有・家族」の3つの視点で目指すべきゴールと現状を比較し、そのギャップから実現に向けて解消すべき課題を浮き彫りにします。
具体的な例(目指す姿と課題の抽出)
経営: 「202X年までに息子を社長、自分を代表権のない会長にする」
➔ 【課題】 専務や他の役員・キーマンへの事前 説明や合意ができていない
所有: 「後継者に自社株式の3分の2以上を集約する」
➔ 【課題】 株価が高く、生前贈与や譲渡の税負担・資金確保が重い
家族: 「後継者以外の親族も含めて円満な相続を行う」
➔ 【課題】兄弟など本人以外の親族への配慮や意向の共有ができておらず、将来揉める原因やトラブルが生じるリスクがある
ステップ3:優先順位の決定と「事業承継計画」の策定
抽出された課題への行動を検討し、「いつ、誰が、何をやるか」目的や期間を明確にまとめた『事業承継計画書』を作成します。
計画書には、後継者の教育スケジュール、役員体制の変更時期、自社株の移転時期、前経営者の退任時期などを中長期の年表として落とし込みます。
明確な方針が決まったら、決定した内容を段階的に実施しましょう。
ステップ4:後継者教育と社内外への周知
計画を進めていく中で、特に時間をかける必要があるのが、後継者の育成と周囲との信頼関係づくりです。
後継者にはまず、意思の確認をしっかり行います。その後、社内での実務経験や他社での修行で能力を高めると同時に、経営理念や今後の方向性などの想いを伝えていきます。
周囲との関係づくりも丁寧に行う必要があります。社員、取引先、主要取引金融機関に対して段階的に周知と挨拶を行い、後継体制への理解と協力を求めます。
ステップ5:株式・資産の移転と経営権のバトンタッチ
実際の権利移転と代表権のバトンタッチは最後のステップです。
自社株式や事業用資産を後継者へ引き継ぎ(※後術する節税制度などもここで活用します)、関連する法律に則って代表取締役の変更手続きを行います。
バトンを渡した後、前社長は事前に取り決めた範囲内で現社長をサポートし、事業承継を完遂させましょう。
これら全てのステップを自力で行うことは困難です。
資産の譲渡や税制へのサポートは勿論、早めのステップから専門家をパートナーとして迎え入れることで、スムーズな事業承継が可能となります。
親族内承継の補助金・税金・自社株式の対策
親族内承継は、自社株の評価や相続問題などが絡み、複雑でややこしいプロセスを伴います。特に自社株の価値(株価)が高い会社ほど、贈与税や相続税の負担が大きくなり、事業の継続を圧迫するケースが少なくありません。
そういった人たちにむけて、国は後継者を支えるための税制優遇や補助金制度などの支援を設けています。 以下に主な制度を挙げます。
① 特例事業承継税制
後継者が取得した自社株式に係る贈与税・相続税の納税が実質全額猶予(一定要件のもと免除)される非常に強力な節税対策
② 事業承継・引き継ぎ補助金等の活用
事業承継を契機として、新事業の開拓や経営革新(設備の最新化、DX推進、新たな販路開拓など)に取り組む後継者を対象に、国から補助金が交付される仕組み
③ 侵害額請求トラブルへの対策 :民法の特例
経営承継円滑化法に基づく「民法の特例」を活用すれば、
後継者に贈与された株式を他の相続人の遺留分計算対象から外す(除外合意)、または合意時の評価額に固定する(固定合意)ことが可能となる
上記の支援以外にも、株式買収用の低利融資制度や連帯保証の解除制度など、活用できる手厚い支援があります。
手続きの詳細は公的機関のサイトやガイドでも案内されていますが、支援をフル活用するためには、早い段階で外部の専門家に相談し計画的に準備を進めるのが確実です。
まとめ
- 親族内承継は、創業の精神を引き継ぎ、企業の将来価値を高める機会である。
- 5つのステップに沿って「経営・所有・家族」における課題を見極め着実にクリアすることが承継の成功につながる
- 特例事業承継税制や補助金、金融支援といった国の支援施策を漏れなく活用するためには早期からの準備が大切
まずは専門家へ相談してみることが、スムーズな事業承継への第一歩となります。
弊社(石塚 株式会社)のご支援について
お客様のご要望に合わせて、以下の三つの支援サービスを展開しております。
- 事業承継学
全6回(前半4回は会社を問わない理論学習、後半2回は各社様の状況を踏まえた優先論点の整理)を個別指導で行います。ファミリーガバナンス形成に関する理論と実務の急所を余すことなくお伝えします。託す人と継ぐ人、関係するファミリーの皆さんが決意を固め、経営のバトンを繋ぐための能力を養います。 - 個別コンサルティング
毎月の面談を通じて、理念の策定から、意思決定の仕組み、承継やファミリー関与のルール設計、対外発信、実行まで、実際に経験した人間だからこそできる経営現場に即した具体的な支援を行います。
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