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2026.10.22
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事業承継 親子トラブルあるある<事例解説> ーバトンを手に、考えるー

事業承継に取り組む経営者の皆さまとお会いする中で、今非常に多くご相談いただくのが親族内承継においての”家族の感情”からおきるトラブルについてです。 当コラムでは、事業承継のバトンタッチの後に生じる”あるある”なトラブルと、その対策を解説します。

長年会社を支え合ってきた親子だから、なんとかなるだろうと思われがちですが、実は親子だからこそ、複雑なトラブルが発生しやすいものです。 実際のところ、家族と一度も揉めたことがない人なんて、そうはいませんよね。

バトンタッチ後に起こりがち、”あるある”なトラブル

親子間での事業承継において生じる残念な”あるある”。
私が日々出会う事業承継トラブルの中でも、特に多い典型的なケースについてお話します。

「経営権を委譲したはずの前社長が、口を出してくる」

代表取締役を後継者である子へ譲り、役職上は退いたはずの前社長(親)が、
なぜか人事の決定権を握ろうとする。
なぜか取引先と個人的に話を進める。
なぜか現社長(子)にチェックをお願いした書類に、先に目を通して意見を言ってくる。

社内の部下や社員は「前社長と新社長、どちらの指示に従うべきか」と対応に迷い、日常の業務や意思決定の停滞を招いてしまいます。
最初はサポートを求めようと思っていた新社長も、「もう口を出さないでくれ」と反発し、 会社を巻き込んだ親子喧嘩に発展してしまうーー。 実はこれ、あるあるなのです。

「前社長が現社長に嫉妬する」

嫉妬というと可愛らしく聞こえますが、争いが起こる理由としては十分で、ここから所謂お家騒動につながることも少なくありません。
これまで自身を頼りにしてくれていた社員や外部の取引先が、少しずつ子どもの方を向き始める。
自分の仕事が減り、現場に顔を出しても社員はどこかよそよそしい。
しかも、自分の知らない経営戦略で業績が伸びている!

長年会社を引っ張ってきた前社長ほど、大きな喪失感を感じてしまいます。
その結果、古参の幹部と徒党を組んで社内を混乱させたり、後継者を追い出してしまうなんていう事態も、ファミリー企業では決して珍しいことではないのです。


会社を巻き込む親子喧嘩の正体とは

こうした二重権力のドタバタですが、私は耳にするたびに「このままだと誰も幸せにならないのに……」と胸がキュッとなります。

私自身は、幸いトラブルなく会社を承継することができました。
それでも、祖父から父への承継で家がピリついていた空気は覚えていますし、父から自分へ引き継ぐ時も、「早く成長して認めてもらいたい」という焦りとプライドで空回りしてしまう瞬間がありました 。

正直に申し上げますと、親父の背中は嫌になるほど大きいです。

コミュニケーション不足が理由! じゃない

こういった自分の経験も踏まえて、今回のトラブルに対して思うのは、”どちらが悪いと決めて解決する問題ではない”ということです。

親(前社長)からすれば、人生を捧げて守ってきた会社です。
「会社と社員は大丈夫なのだろうか」という不安や、「自分の存在価値が小さくなっていくような寂しさ」を感じるのは人間として当然です。
一方で子(新社長)も、さまざま重圧や孤独を抱えて必死に闘っています。
どちらも会社を思う気持ちは一緒なのに、世代の違いや、抱える不安からどうしてもすれ違いが生じてしまいます。

そのため、お互いに相手を理解しようと話し合いを重ねても、すれ違いを避けるのは困難で、むしろ想いが裏目に出て「なんでわかってくれないんだ」と泥仕合になりがちです。
そもそも、一度生じた対立や摩擦を解決するというのは、極めて難しいことなんです。

ですから、お互いの気持ちや誇りを守りつつ円滑に引き継ぐためは、事前に「客観的な仕組み(ルール)」を準備するという方法が一番だと思います。


バトンタッチ期のトラブルを防ぐ極意

私が考える、バトンタッチ期のトラブルを避け、事業承継を成功に導くためのポイントは次の2つです。

明確な「引退時期」と「引退の定義(ゴール)」の設定

「〇年後に退任する」という具体的な期間を決めるだけでなく、「引退とはどのような状態を指すのか」を明確にしておくことが重要です。
ここが曖昧なままだと、代表権を外したから引退したという考え方の前社長と、口を出してほしくない新社長とですれ違いが起きる可能性があります。
意思の決定には関与しない、その代わりに相談役としてアドバイスをもらうタイミングをしっかりつくる、など引退後のルールと役割をちゃんと言葉にして確認しておくだけで、かなりのトラブルが防げます。

「経営権」と「自社株(所有権)」のロードマップ設計

「社長を交替する」ことと、「会社の株を全部渡す」ことは、同時でなくても、どちらが先でも大丈夫です。
むしろ、ここを混ぜて考えるから揉めてしまうことが多いんです。
大切なのは、経営権と株式のそれぞれに適切なロードマップをひくことです。

特に自社株の移転は、税制や他の親族への資産の相続など非常にナイーブな問題も絡むため、専門家も交えて方針をしっかり計画することで、スムーズに承継を進めやすくなります。

残念なあるあるを引き起こさないためには、早い段階で以上のようなルール設定を行うことがおすすめです。

ただし、これらは家族だけで行うと、「俺を追い出したいのか!」「自分のことを全然信頼してくれない!」など、どうしても知識より感情が表に出てしまいます。
第三者の視点を活用しお互いが冷静に話し合える機会をつくることで、 目的を見失うことなく、より良いルールを構築することが可能です。


まとめ:皆さまへ

私は、日常生活において、一度も家族と喧嘩しないで過ごすなんてことは不可能だと思いますし、そうあるべきだとも思いません。
しかし、会社を承継する際の家族内でのトラブルは不要です。
そして、バトンを渡す側と渡される側双方の「会社を良くしたい」という思いと、きちんとした準備さえあれば揉めない承継は実現できると考えています。

必要なのは、感情論で傷つけ合うのではなく、お互いのプライドとリスペクトを守るための「仕組み」を学ぶこと、正しく用意してあげることです。

(……なんて偉そうなことを言っている私自身、会社で突然父親に声をかけられると「何かマズいことやったかな?」とドキっとしてしまうこともあるのですが笑)

会社が積み重ねてきた大切な歴史が、争いではなく感謝と共に将来へつながる。
関係者全員にとって最善の事業承継が、ひとつでも多く生まれることを願っています。

 


家族間トラブルを防ぐ最大のポイントは「こじれる前」の準備です。感情論になる前に、第三者を交えたルール作りを始めませんか?
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