
家族間で意見が割れた後継者選び【製造業のケース】
創業60年の精密部品メーカーで、兄弟のどちらが後継者にふさわしいかを巡って社内が分裂。感情的な対立をどう整理し、組織を立て直したのか。
クライアント概要
- 業種:精密部品製造業
- 所在地:愛知県
- 社員数:60名
- 資本金:2,000万円
- 登場人物:社長(68歳)、長男(製造部長・37歳)、次男(営業課長・35歳)
課題背景
この会社は、地域に根ざしたBtoB製造業として長年取引先から信頼を得てきました。
しかし創業者である社長が引退を意識し始めた頃、後継者問題が表面化。
製造部を支える長男と、売上拡大に貢献してきた次男のどちらを継がせるかで、家族内の意見が真っ二つに割れました。
社長は「どちらにも才能がある」と判断を避け、結論を先送り。結果として社員が不安を感じ、幹部間でも派閥のような空気が漂い始めました。
コンサルティング支援内容
私たちはまず、兄弟それぞれに個別ヒアリングを行い、「自分が経営を担った場合、どんな会社にしたいか」を明確化。
意外だったのは、兄は“安定した生産品質を守りたい”という思いが強く、弟は“新規開拓で会社を成長させたい”と考えていたこと。
つまり、対立ではなく“視点の違い”でした。
次に、経営課題や業績データを整理した「経営の見える化シート」を用い、会社全体の強み・弱みを客観的に共有。
幹部を交えたファミリーミーティングで役割分担案を提示し、最終的に「長男=代表取締役・品質管理」「次男=取締役・営業戦略統括」とする共同経営体制を設計しました。
さらに、意思決定ルールと家族間合意文書を整備し、感情に流されない“仕組みの承継”を実現しました。
結果・効果
正式な代表交代後、社内の混乱は短期間で収束。
社員が両名をリーダーとして受け入れ、チームワークが回復しました。
営業と製造の連携が強化されたことで受注精度が上がり、翌期売上は前年度比115%を達成。
兄弟関係も改善し、「会社と家族の両方を守れた」と社長が安堵の声を上げました。
ポイント・学び
事業承継における家族間の対立は、「誰が継ぐか」ではなく「何を継ぐか」が曖昧な時に起こります。
感情論ではなく事実を共有し、役割を明確化することが、家族経営を円滑にする最大のカギです。

